BiotinとAvidin
Biotin:どの細胞にも存在する一種の成長因子で,ビタミンB複合体のひとつで,ビタミンHとも呼ばれる.炭酸固定やカルボキシル基転移反応に関与する酵素の補酵素として作用するのでCoenzyme R(R)ともいう.脂肪酸,糖代謝に関与し,欠乏すると皮膚炎になる.
肝,腎,膵,イースト,ミルクに多く存在する.
Avidin:生の卵白から単離された塩基性糖タンパク質である.鳥類,両生類の卵管で作られる.4個の本質的に同じアミノ酸128個からなる単鎖(N端アラニン,C端グルタミン酸)のサブユニットで形成され,分子量は約66,000である.熱処理や放射線照射で破壊される.
Avidinは各サブユニットがビオチンと結合し,ビオチンを不活性化する.それぞれのサブユニットは1個のビオチンを結合できる.解離定数Kd=10-15M(抗体よりも強い結合能と言える).
大量の生卵白をラットや鶏に与えると,ビオチン不足に陥り,皮膚炎や成長抑制を起こす.この作用はビオチン投与で抑制できる.
図のようにビオチンは小分子で,抗原抗体反応に影響することが少なく,カルボキシル基を持つために標識し易い.