測定精度

精度 (precision) に関するパラメータ
ICHの合意事項では精度 (precision,均質な検体から多数回採取した複数の試料の測定値間の一致の程度)に関して3種類のパラメータ,即ち併行精度 (repeatability),室内再現精度 (Intermediate precision), 室間再現精度 (Reproducibility)を挙げている.
 
併行精度 (repeatability)と室内再現精度(intermediate precision)の計算
併行精度は短時間の間に同一条件下で測定する場合の精度とされ,intra-assay precision と同義であるとされている.これまでは単に測定精度,precisionあるいは同時再現性とされてきたものに相当する.
室内再現精度 とは同一施設内で試験日,実施者,器具,機器等を変えて測定する場合の再現性の精度で,これまで使われてきた再現性(reproducibility)あるいは日差再現性に相当する.室間再現性として”reproducibility”が使われてしまっているので混同しないよう注意が必要.

いずれの場合にも変動係数(Coefficient of variation,CV)で表現される.即ち,
変動係数(CV)=(標準偏差(SD)/平均値)x 100 (%)
CVのことを別称,相対標準偏差(Relative standard deviation,RSD)ともいう.
これら変動係数は,併行精度の場合はintra-assay coefficient of variation, within-assay coefficient of variation, 室内再現精度の場合は inter-assay coefficient of variation,between-assay coefficient of variationと呼ばれている.
ひとつの試料での測定値のバラツキの原因は,ひとことで言えば個々のウェルでの反応の不均一さに由来する.具体的にはピペットの選択と使用法,検体の不均一(特に凍結保存された検体を融解した時の溶質の濃度の偏り)ウェルの洗浄にバラツキや洗浄液の残りがあるなどである.ウェルプレートの温度が低いまま測定を始めると,プレートの外側部分の温度が上昇しやすいので反応が進んでしまう,いわゆるエッジ効果も測定精度を悪化させる原因となる.測定を行う際,実験操作に充分注意し安全かつ安定な操作法を実行することで測定精度はかなり改善される.
 
室間再現精度 (reproducibility)とは異なった施設間で測定する場合の精度をいう
通常ひとつの測定室で測定を行っている限り,これに関するデータは得られない.共同プロジェクトを立ち上げいくつかの測定室が協力して行う必要がある.実際に日本アイソトープ協会の放射性医薬品部門では定期的にキットと試料を揃えて全国の臨床検査室に配り測定を依頼しその結果をまとめている.
室間再現精度の検討は一方では測定室や測定者の技能検定(proficiency test,PT)にも応用される.つまり定期的に均一な材料から取り出した試料を多くの実験室(測定者)に配り,分析の結果を中央の計画実施機関に報告してもらいます.そこでの検討結果は全てのデータとともにフィードバックされるのです.これによって反省が行われ,次の分析にどう反映されるかが試されることになる.