測定対象物質の吸着
ペプチド(ポリ,オリゴを含めて)にはプラスチックに吸着しやすいものがあります.一般的にはペプチドの構成アミノ酸やアミノ酸配列に関係します.例えば疎水性アミノ酸などが多く,ペプチド全体の親水性が高くないものなどは要注意です.
アッセイキットのプレートは抗体などをすでに吸着させており,さらに非特異的吸着を防ぐためにタンパク質の混合物などでブロッキングをかけてあります.例えば検体のピペッティングについては,通常は1回しか行いません.問題はどのようにピペットを使うか,です.
一般的にピペットのチップは材質が高撥水性で吸着の少ないポリプロピレンやポリエチレン製になっている筈です.したがってあまり心配することは無いのですが,吸着が心配な場合には以下のような方法が考えられます.
1.検体をピペッティングするとき,チップを交換せず,全ての検体を同一チップで分取する場合:前もって高濃度,例えば測定緩衝液に溶かした5%くらいのBSAを2,3回量りとって捨てます.こうすることでチップのブロッキングができます.その後検体液を1回吸い取り捨てます(これを共洗いと言います).二回目あるいは三回目にとった検体をプレートに加えるようにします.二番目以降の検体も共洗いすることでそれ以前の検体の影響(キヤリー・オーバー)を予防できます.ただし,検体液量が十分にあることが前提です.
2・検体ごとにチップを交換する場合,やはり出来るならブロッキングと共洗いを行います.もしも新しく交換したチップでいきなり検体を採取し,プレートに移すと,吸着の可能性もありますが,厳密に言うと,チップの内面を濡らす液量分だけデリバリーが不足することになります.したがって共洗いをして内部の濡れを作っておくこと(プレウェッティングと言われております)が望ましいと言えるでしょう.ただし,この場合は,先ず吸い上げた液は捨てないで,もとの検体液の中へ戻してやります.チップを交換するのですから,キャリー・オーバーの心配は無いのです.こうすることで検体液が少量でもプレウェッティングが可能となります.
一般的な注意事項としては,
取り扱うペプチドがどのくらい吸着されやすいのかを前もって調べておくこと.
検体液の希釈には必ず保護タンパクを加えること.一般にペプチド濃度が10μg/mL以下になると吸着が心配されます.したがって十分に吸着防止用の保護タンパクを加えた液で希釈すること.検体が血清の場合にはタンパク濃度が十分に高いのであまり問題はないと言えるでしょう.
検体を保存する容器の材質に注意すること.必要ならば保護タンパクによる前処理を行うこと.