グルコース測定キット

血液中のグルコース量を測定することは、生体内のエネルギー代謝や血糖の恒常性維持の状態を理解する上で重要です。グルコースオキシダーゼにムタロターゼを添加する「ムタロターゼ・GOD法」は、比色法で測定できる、測定時間が短い、微量のD-グルコースも測定できるという特長があり 、血液中のグルコース量を測定する方法として優れています。

当社のラボアッセイ™ グルコースはムタロターゼ・GOD法を用いて、血液(血清・血漿)や細胞培養上清中のグルコースを測定するキットです。マイクロプレートを用いて短時間かつ簡便に検体中のグルコースを測定することができます。

グルコースとは?

グルコース(Glucose)は、ブドウ糖とも呼ばれ、果実をはじめとする植物組織や動物の生体液など天然中に最も広く存在する単糖です。オリゴ糖(スクロース、ラクトースなど)や多糖(デンプン、セルロース、グリコーゲンなど)の構成成分としても知られています。光学異性体としてL-グルコースも存在しますが、天然に存在するのは主にD-グルコースです。

グルコースは生物にとって重要なエネルギー源です。食物を分解して得られたグルコースは、血液に乗って全身の細胞に運ばれます。細胞に取り込まれたグルコースは酵素によって段階的に酸化され、エネルギーが取り出されます。酸素を必要としない解糖系ではグルコースからピルビン酸に分解される過程でエネルギーが生成されます。酸素存在下では、グルコースから生じたピルビン酸はアセチルCoAに変換され、クエン酸回路や電子伝達系を通じて、より多くのエネルギーが生成されます。生物は飢餓に備えてグルコースを蓄える手段も有しており、動物ではグルコースを鎖状につなげたグリコーゲン(Glycogen)として蓄えられます。グリコーゲンは主に肝臓や筋肉に顆粒として貯蔵され、エネルギーを必要とする時に分解されます。

血糖値(血液中のグルコース量)は様々なホルモンの制御を受け、一定のレベルに保たれています。インスリンは細胞のグルコース取り込みを促進させ、血糖値を下げるはたらきがあります。インスリンの機能不全は慢性的な高血糖を引き起こし、糖尿病の原因となります。逆にグルカゴンは、グリコーゲンをグルコースに分解し、血糖値を上げるはたらきがあります1)。生化学検査では血液中のグルコース(GLU)を測定することで、血糖の調節機能に異常がないかを調べています。

グルコースの測定方法

血液中のグルコース量を測定することは、生体内のエネルギー代謝や血糖の恒常性維持の状態を理解する上で重要です。D-グルコースの測定法には、旋光計、核磁気共鳴装置(NMR)、ガスクロマトグラフィーを用いた非酵素法と、グルコースオキシダーゼ(GOD: Glucose Oxidase)を用いた酵素法があります。酵素法の中でもグルコースオキシダーゼにムタロターゼを添加する「ムタロターゼ・GOD法」は、比色法で測定できる、測定時間が短い、グルコースオキシダーゼのみに比べて、より少量のグルコースを測定できるという特長があり2) 、血液中のグルコース量を測定する方法として優れています。

ムタロターゼ・GOD法の原理

生体中のD-グルコースにはα-D-グルコース、β-D-グルコースが存在します。直鎖状構造(アルデヒド型)のグルコースも存在しますが、存在量はごく微量とされています。グルコースの定量にはβ-D-グルコースオキシダーゼが用いられます。この酵素はβ-D-グルコースを特異的に酸化し、過酸化水素(H2O2)とグルコン酸を生成します。α-D-グルコースからβ-D-グルコースへの変換を促進するためにムタロターゼを用います。

ムタロターゼ・GOD法の測定原理を図1に示します。ムタロターゼはα-D-グルコースをβ-D-グルコースに変換します。そしてβ-D-グルコースとグルコースオキシダーゼの反応で生じる過酸化水素と、発色剤中のペルオキシダーゼの作用で、フェノールと4-アミノアンチピリンが酸化縮合します。生成された赤色色素の吸光度を指標に検体中のグルコースを測定することができます。

ムタロターゼ・GOD法を用いたグルコースの測定原理

図1 ムタロターゼ・GOD法を用いたグルコースの測定原理

ラボアッセイ™ グルコース

ラボアッセイ™ グルコースはムタロターゼ・GOD法を用いて、血液(血清・血漿)や細胞培養上清中のグルコースを測定するキットです。マイクロプレートを用いて短時間かつ簡便に検体中のグルコースを測定することができます。

※ ラボアッセイ™ シリーズは研究用試薬です。診断用に使用することはできません。

キット性能

動物種 ヒト、マウス、ラット、イヌ、ネコ
検体 血清、血漿、培養上清
検量線範囲 50-500 mg/dL
検体量 2 μL
測定時間 約10分
測定波長 505 nm (副波長 600 nm)

ラボアッセイ™ グルコースを利用した教育実習

ラボアッセイ™ グルコースはグルコースの測定に必要な試薬・検体がセットになっており、トレーニングキットとしてすぐに使うことができます。コントロール検体を測定して測定技能を身につけながら、測定原理等の知識を深めることができます。

実習資料 酵素を利用した生体成分の測定に関する実験 ~「ラボアッセイ™ グルコース」を用いた グルコースの測定~ (星薬科大学 輪千先生 寄稿)

教育実習に最適な理由

  • 短時間(約10分)で測定可能
  • 測定検体は、溶解・混合するだけで処理可能
  • キット容量が500回用と大人数での測定も可能

本キットで学べること

[初心者向け]

  • グルコースの測定原理と手順
  • 基本的な試薬調製の習得
  • ピペットマンの取扱い
  • 96ウェルプレートの取扱い
  • マイクロプレートリーダーの取扱い
  • グラフの作成、データの解析

[経験者向け]

  • 測定者/測定室の継続的な技能評価
  • 測定者/測定室の問題点の把握、改善のチャンス
    (不適切な測定操作、手順、使用機器・設備の校正不良など)
  • 測定者/測定室間差の把握
  • 測定データの信頼性の担保
  • 教育、実習の機会

キットの操作方法 (教育実習向け)

試薬調製

試薬調製

検体調製

検体調製

測定操作

測定操作

吸光度測定

吸光度測定

検体の調製(検量線作成用)

以下の表に従い、標準液と精製水を混合して試薬を調製する。

表1 試薬の調製
Sample No. 試薬の調製 測定での使用
標準液I 標準液II 精製水 使用量 濃度
1 50 μL 150 μL 2 μL 50 mg/dL
2 100 μL 100 μL 2 μL 100 mg/dL
3 原液 2 μL 200 mg/dL
4 150 μL 100 μL 2 μL 300 mg/dL
5 200 μL 50 μL 2 μL 400 mg/dL
6 原液 2 μL 500 mg/dL

操作の実際は動画でもご覧いただけます

測定

1. 表2に従い、各検体をマイクロプレートに添加する (各2ウェルずつ)

2. 検体を添加したウェルに、発色試薬を300 μL添加する

3. 振とう機等でよく混合し、37℃で15分間静置する ※ 呈色は室温温度で1時間以内はほとんど変化はありません

4. マイクロプレートリーダーを用い、ブランクを対照として吸光度を測定する  (主波長 505 nm / 副波長 600 nm)

表2 検体および発色試薬の添加量
検体種類 検体 精製水 発色試薬
未知検体X 2 μL 各300 μL
未知検体Y 2 μL
Sample 1 2 μL
Sample 2 2 μL
Sample 3 2 μL
Sample 4 2 μL
Sample 5 2 μL
Sample 6 2 μL
ブランク 2 μL

データの解析

結果記入シート例

以下のシートに測定結果(吸光度)を記入する。
サンプルはブランク平均値(n=2の場合)を用いて補正する。

結果記入シート例

データ解析例

1. ブランク、Sample 1-6の吸光度を基に図1のような検量線のグラフを作成する (横軸:グルコース濃度、縦軸:吸光度)

2. 検量線の回帰式から未知検体X,Yのグルコース濃度を算出する

データ解析例

参考文献

  1. Jiang, G. and Zhang, B. B.: Am. J. Physiol. Endocrinol. Metab., 284(4), E671(2003).
    Glucagon and regulation of glucose metabolism.
  2. 奥田潤、三輪一智、前田和男: 臨床化学, 2(3), 289(1973).
    D-グルコースの α-および β-アノマーの微量定量法

製品一覧

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ラボアッセイ™ グルコース

関連製品一覧

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