原因と対策

バラツキすなわち測定精度が大きくなってしまう主な原因は,反応の不均一な進行とピペッティングのバラツキ,および検体の不均一性です.

●反応を不均一にする様々な要因があります.
1) 洗浄液を吸引する際,アスピレーターを使ったためにウェルの底を引っかいた.

2) 試薬添加の際ピペットの先端がウェルの底を引っかいている.
8連,12連ピペットで試薬を加えるとチップがウェルプレートに平行にすることが難しく,ウェルの底部を引っ掻く可能性が大きくなります.

3) プレートが充分に室温に戻っていないための反応進行の差が生じた(エッジ現象).プレートや試薬溶液を冷蔵庫に保管した場合には,外に出してから1時間半ほどおいて,室温化させてから使用することが大切です.

4) プレートにエアコンの冷風(夏)や機械の冷却装置の吹き出し口からの温風が当って温度を偏らせた(これもエッジ現象).またプレートの傍にストーブとか発熱する機器があると,輻射熱でエッジ現象が起こります.

5) エアコンやパソコンなどの温風が当ってウェルを乾燥させた.

6) 洗浄液が完全に除去されておらず,ウェルに残っていた.

●ピペッティングのバラツキ,特に標準溶液や検体をウェルに加える際のピペッティングのバラツキはそのまま測定値のバラツキに結びつきます.
正しいピペットを正しく使うことが大事です.
○正しいピペットとは,見合った,可変ピペットの最大容量が加えるべき標準溶液や検体量に近いもののことです.例えば5μlや10μlの検体を最大量50μlや200μlのピペットで採取・添加すると相対的バラツキは非常に大きくなってしまいます.
 
○また,使用するピペットの精度を検査しておくことが必要です.
 
○ピペットの使用法も重要です.
ピペットの使用法としては,「プレウェッティング法」と「共洗い法」があります.両者を混同して使わないことです.このことについての解説はシバヤギホームページの「シバヤギキット操作法の手ほどき」や小冊子「ELISA A to Z」をご覧ください.
また,量りとる液体の温度も重要です.標準溶液や検体,および全ての試薬溶液は必ず室温に戻してからピペッティングするようにしてください.
 
○ピペットの詰まり
血漿を凍結保存すると,融解した際にはフィブリンが析出していることがあります.これをそのままピペットでサンプリングするとフィブリンがチップの先に詰まり正しい液量を量りとることが出来なくなる可能性があります.必ずよく撹拌した後遠沈して固まったフィブリンを細い針金(マンドリンのような)の先端を曲げたもので掬い上げ,取り除いてください.
 
●検体の不均一
検体は測定まで凍結保存し,測定の際に融解することが多いのですが,血清や血漿は凍結の際と,融解の際にタンパク部分が後で凍り,先に融けるということが起こり,その結果保存容器の底部が濃く上部が薄い状態になりやすいのです.そのままサンプリングすると1回目と2回目では濃度が違うことになり,ウェル間のばらつきが大きくなります.凍結保存したタンパク溶液は必ず撹拌して均一にしてからサンプリングしてください.
 
○8連,12連ピペットをお使いの方は各チップに採取・排出される液量が等しいかどうかを検定してお使いください.